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2023年10月 管外視察報告

神奈川県庁

  • 分身ロボット「OriHime」を活用した障害者の社会参加について

【概要】

神奈川県では平成28年7月26日、県立「津久井やまゆり園」において、障がいのある方を含めたが19人が死亡、27人が負傷するという大変痛ましい事件が発生した。このような事件が二度と引き起こされないよう、「ともに生きる社会かながわ憲章」が制定された。

令和元年に小田原市と(株)オリィ研究所とが連携協定を締結し、分身ロボット「OriHime」を活用した障害のある方を採用する事業が予算化された。令和2年度に平塚市役所で試行開始され、次年度はコロナ対応で事業を見送り、令和4年度に平塚市で事業の本格実施がなされた。本年度は小田原市役所にて実施されている。事業の目的としては、分身ロボット「OriHime」を活用し、障がいのある方を在宅のまま県職員(会計年度職員)として任用し、障害のある方の就労機会の拡大と、新たな就労の形として社会には発信し共生社会の実現を推進することとされている。

予算として人件費、賃借料154万1千円で県の単費である。パイロットとしての採用は1人、県の担当者の人員体制は2名で、機会の不具合などは代替え機がある。業務報告は毎日あり、スキルアップ研修等がある。その場合、パイロットはzoom参加で、その他の業務内容としては小田原市の視察報告の通り。

神奈川県の取り組みとして、その他にも「農福連携マッチング」や「ともいきアートサポート事業」「ともいきメタバース推進事業」などがある。

 

【所感】

・台数増加の予定は無く、各市町村の窓口で実施することで広げていきたいということであったが、今後どのように広がっていくのか、注視していきたい。

・今後の課題として、どのようなテクノロジーを活用し、障がいのある方の適正や事業内容によってどの手法を選択するのか選定方法を考えていかねばならないとのことであった。

 

【提言】

「障害者共生条例」が制定された西宮市としては、障がいのある方々の就労支援についても、さらに踏み込んだ取り組みを期待している。本市では障がいのある人の就労については西宮市障害者就労生活支援センター「アイビー」に委託されており、企業とのマッチングやフォロー体制など幅広い取り組みがなされている。さらに就業の可能性を広げるために、分身ロボットやリモートワークも含めて取り組むことは大変有効であると考える。障害の状況によって採用者は限られるが、コロナ禍で社会全体に在宅ワークが見直された状況も踏まえると、在宅での就労の可能性は広がっている。西宮市でも障がいのある方の就労についての取り組み拡大を要望する。

 

 

  • 当事者目線での障害福祉の取組について

【概要】

「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」の条例制定について説明をお聴きした。平成28年7月26日津久井やまゆり園の事件が発生し、被害者の方のみならず、多くの方にとって大きな衝撃であった。神奈川県ではこのような事件が二度と繰り返されないよう平成28年10月に「ともに生きる社会かながわ憲章」が策定された。津久井やまゆり園の再生を進める過程において当事者目線に立たなくてはならないことに改めて気付き、障がいのある方々との対話を重ね、令和3年に「当事者目線の障がい福祉実現宣言」を発信した。

令和3年7月に新たに津久井やまゆり園が完成し、同じく11月には芹が谷やまゆり園が完成した。「当事者目線の障がい福祉」を実現するために普遍的な取り組みとして、条例制定が最も効果的との考えから令和4年10月の条例制定に至った。条例の特色として、当事者目線の障がい福祉の考えに至った経緯や全ての障害者が対象であることを記した全文を置くことや、当事者の政策決定過程への参加の推進や、だれもが意思決定支援を受けられることを明示している。

条例の「わかりやすい版」作成は、当事者の方も含めたメンバーで2ヶ月で完成させた。その経験は、障がいがあってもやり遂げることができるという感想や、行政側はそれまでわかっていなかった気づきがあったということである。

条例の周知については、広報や学校へ当事者が出向いての講演など取り組まれてる。

 

【所感】

・津久井やまゆり園の事件は今でも社会の深い傷であり、障害のある方の人権を考える時に必ず引き合いに出される事件である。

・大規模な障害者施設が長きにわたって「安全に」という理由で障害のある方々の人権が蔑ろにされてきたことは否めず、これは日本社会の問題である。

・障害があることで社会から分離されること自体が差別であり、当事者にとっての人権無視だけで無く、優生思想を肯定することになり、様々な生きづらさに繋がると考える。

・障がいがあっても無くても、社会の一員として対等な関係で生きていける環境を整えることが第一である。

(西宮市への提言は中井やまゆり園視察報告とまとめて記述)

 

 

 

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